カクテルの後は……
「ベッドで身にまとっているのはシャネルの5番だけ」「最高の睡眠薬はセックス」などの名ゼリフで知られる大女優マリリン・モンロー。
貧しい家に産まれたモンローは16歳の時にモデルとしてデビューし、紆余曲折を経ながらもB90・W60・H90というゴージャスなボディ、陽光をちりばめたようにきらめく金髪、コケティッシュな表情で世界中の男性のハートを虜にし、ハリウッドの大スターへと上り詰めて行った。
一世を風靡しつつも演技に苦悩を続けていた1962年、自宅のベッドで受話器を握りしめたまま死亡しているのを発見されているが、その死因については睡眠薬を飲み過ぎての事故や自殺説をはじめ、電話の相手と推察される最後の恋人といわれる大統領ジョン・F・ケネディにまつわる暗殺説など未だ解明されていないのは周知のとおりであろう。
セックス・シンボルとして認知度の高いモンローだが、本人は演技派女優と呼ばれることを目標にしており、そのジレンマからドラッグを常用し、酒に溺れることも度々だったとされている。実際、3人目の夫となった作家アーサー・ミラーと出会ったのもカクテル・パーティーの席上であり、モンローはウオッカ・オレンジ、ラムがベースのカクテルを好んで飲んでいたとも伝えられている。
そんなモンローだけに彼女が出演した映画では、モンロー演じるキャラクターの個性を語るうえでカクテルがしばしば効果的な役割を果たしている。
たとえば、代表作の1つに数えられる『7年目の浮気』の中でこんなシーンがある。
結婚7年目を迎え、ちょっぴり浮気心がうずき出した中年男の前に現れたモンローがマティーニを飲むシーンなのだが、モンローは「大きなグラスでね」とオーダーするのである。さらにマティーニを一口含んだモンローは愛らしく顔をしかめ、「砂糖を入れて」と漏らすのである。
マティーニは辛口なだけでなく、アルコール度数の強いカクテルなので、男性であっても大きなグラスでは飲まないし、まして辛口のカクテルに砂糖を入れて飲むなどということはありえないのだが、このシーンではモンロー演じるキャラクターの世間知らずな一面などを強調したかったのだろう。
これがモンロー演じるキャラクターでなければ、「おいおい。砂糖を入れるんだったら最初から辛口のカクテルなんかオーダーするなよな」となるところだが、ゴージャスボディのモンローが艶やかな笑顔を浮かべているのだから、『7年目の浮気』で相手役を務めた中年男だけでなく男なら誰もがメロメロになってしまうのは当然といえるかもしれない。
もちろんカクテルで心地よく酔った後は「ベッドで身にまとっているのはシャネルの5番だけ」「最高の睡眠薬はセックス」と言っていたモンローと……、などとついつい妄想してしまうのは筆者だけだろうか。
ちなみに飲酒することによって女性は解放感が増しセックスに対する積極性が出て来る一方、男性は射精までの時間が長くなり、より女性を喜ばせられるといわれるとおり、酒とセックスの相性が良いのは事実で、寝付きをよくする為に飲むとされるナイトキャップ(寝酒)にもセックスを滑らかにするという隠れた意味合いが込められている。
さあ今夜あなたは誰とナイトキャップを傾けますか……。